Team Kyosho (ひろさか)活動レポート


 活動レポート NO−14

 2008/02/19〜25日  タイ(TITC)に参加
 
 2月19日(火)
 例によって朝4時30分自宅を出発、フライトは9時15分、
 6時までに東京を通過しなければ、通勤ラッシュにかかり到着
 がうんと遅くなる。通常だと、早ければ3時間弱で到着するが、
 30分遅れると1〜2時間位遅くなってしまう。以前は渋滞に
 事故が加わり5時間以上かかり、危うく乗り遅れる寸前という
 苦い経験がある。

 今回は順調に成田に到着、まずは香港に立ち寄り、パーツを
 調達し、夕方タイへ向う。ニコラスは昨日よりタイに入り練習を
 始めた様だ。

 夜8時無事バンコクに到着、タクシーでホテルに向う。ホテルで
 ニコラスと合流。どう、今日は走行したの? はい、12パック程
 走りました。調子は?まあまあです。でも皆速いです。 それは
 当たり前、今回は特に今年の世界選手権がある為に多くの
 トップドライバーが参加する様だ。去年の様には行かないと
 思うよ。

 とにかく、今日は疲れた! もう寝るよ。 明日は何時? 
 7時半に朝食8時過ぎに出発でどうですか? OK、おやすみ〜


 2月20日(水)
 予定通り朝食を済ませ、8時にコースへ向う。予想に反して
 非常に少ない人達、まだ練習日の為か出足は遅い。我々は
 早々に走行準備にとりかかる。今回は、ニコラスカーのシャーシ
 のみを使用し、あとはすべて私が組み立てた車に交換する。
 ちょっとややこしいが、メインシャーシーが1枚しか無い為に、
 私は他のシャーシーに組み込み、ニコラスが使用している
 シャーシに積み替えるという作戦。

 今回の練習日は1時間の間に30分ずつ、ストックとモディファイ
 に分かれて練習をする方法が取られている。従って通常は
 1時間に1回の練習という事になる。勿論30分の間に2回
 走行する事も可能だが、これではセットが出来ない為に一回の
 走行とする。

 まず一回目はそのままの状態での走行で状態をみる事にする。
 車を見るとやはりかなり色々な所を触り、セッティングを変えて
 いる。これでは出発点が、分からない。

 まずは走行、私の予想以上に車は良く走る、しかしフィーリング
 は私の好みでは無い。一見は良さそうだが、たぶんこのままでは
 伸び悩むだろう。

 時間的に一度にすべてを変える事は難しい為に、リア部のみを
 すべて移植する。ニコラスセットは、サススペースゼロ、Iアーム
 位置も変えている。私のセットは全くの標準。

 2回目の走行、リアグリップが上がり安定した走行。次は
 フロント部を交換、これで全ての移植完了。ほぼ標準のセットと
 なった。

 3回目、かなり良い状態となった。少し曲がり過ぎとの事だが、
 車の状態はかなり良いと思えた。ニコラスは何を変えたの
 ですか? 何もしていない、部品は、殆ど新品だがセットは
 これが標準だよ。 セッティングはこれからだ。
 
 ニコラスは色々と自分でセッティングをしていた様だが、結果的
 には良い方向には行っていない。これは標準から始めずに、次々
 とセットを変えていくから、迷走状態になっている。それなりに車
 が走るから良いと思っているが、行き当たりばったりのセッティング
 は次へ繋がらない。

 リアは問題無いと思うので、次はフロントのスプリングを少し
 柔らかくしてグリップを落とそう。
 走行後ステアリングもかなりマイルドになり操縦も楽そうに見えた。
 どう? かなり良いです。次はどうなれば良い? 今良すぎて
 分かりません。要求が無ければ次へ進めないじゃないの。
 OK、じゃこれをベースとして、まずはスプリングを前後色々と
 変えてフィーリングのテストをしよう。

 リアの候補は3種類、一番フィーリングの良いものを選択。
 フロントも3種これらをいろいろと組み合わせ、結局はリアは
 一番柔らかいもの、フロントも通常より、柔らかいものに決定。

 全体的にはかなり良い感じだが、コーナーでのスムーズさに
 少しかけるようだ。明日はフロント部を中心に、もう少しスムーズ
 に曲がる様なセットを探してみよう

 今日の練習を見た感じでは、昨年より一段と上手くなった様だ、
 タイム的にはまだトップクラスの選手には及ばないが、ミスが非常
 に少なくなった。また他車もよく見えている。15台〜20台位の
 車が走っているが、クラッシュが非常に少なくなった。
 ニコラスはラップが遅く不満気だが、それは仕方無い、まだまだ
 彼等と対等のタイムを出すのは無理。とにかく今回はミスを
 少なくし、ラップを安定させる事を目標にしよう。


 2月21日(木)
 今日も昨日と同じ8時出発、コースにつくと今日は昨日より少し
 人が多く来ている。私は早速メンテの為に車を分解しだした。
 ニコラス、今日のスケジュールを調べて来いよ! 彼は電話を
 持ち掲示板にてチェック、そしてピットに戻り、テーブルの上に
 何やら数字を書いている...おまえなあ〜こんな所に時間を
 書いてどうすんの? ちゃんと紙に書いて私の前に貼るんだよ!
 はい。 ほら、これに書けよ! って私のノートをちぎって渡して
 やった。

 よく見ると最初のスタートは11時...なんでこんなに遅いの?
 でも今車をバラしているので、1回目は走れないでしょう? 
 と不満げ。あのねえ〜、あんたのメカニックは何年メカをやってん
 のか知ってんの? 私は1回目は9時過ぎから走れるのを知って
 いるよ。それに合わせて車をバラしているの、1時間もあれば
 余裕で整備するよ。今日は少しタイムスケジュールが変更されて
 昨日は30分交代だったが今日は45分交代となっている。

 ニコラスは多くの回数を走りたいから、1度の練習時間に2度
 走行をしたいと言ったが、30分では難しい。しかし45分なら
 2度走行は可能だ。よし、今日は望み通りに2度走行をさせて
 やる。しかしこれは大変忙しいよ。

 タイヤの準備、そしてバンド待ち、またその間にセッティングも
 やらなくてはならない。すべてのラウンドで2回は無理かも知れ
 ないが、出来るだけ頑張って見よう。ニコラスは嬉しそうに笑った。
 とても可愛い。彼は言葉は少ないが、直ぐに表情に出るから
 面白い。

 余裕で整備を終え、練習一回目結構良い走りをする。車の
 セットはまあまあ良いと思う。インフィールドは大変速い、トップ
 選手達と全く引けを取っていないしかしタイムが出ない、私は
 原因は分かっていた。スピードが非常に遅い。ニコラスも分かって
 いる筈だ、しかし彼は言わない。私も何時言ってくるか?
 と思っていたが、決して口には出さなかった。そしてコーナーが遅い
 と指摘する。

 とにかく今は、コースに慣れて遅いスピードでタイムを出す様に
 させる事。私にも原因は分からない。バッテリー、モーター、
 スピードコントローラー?このいずれかに問題がある。でもこれは
 解決出来る。いいチャンスなのでもう少し我慢させよう。車は
 殆どセットしない、今はひたすら走らせる。タイムが気になるらしく
 走行後はいつもタイムはどうでしたか? と尋ねる。私はわざと遅い
 タイムを言ってやる、他のドライバー達はどんどんと速いラップを
 出してくる。

 ニコラスもだんだんと落ち込んで来た。だれそれが何秒を出した
 等いろいろな情報が入ってくる。そろそろ限界かな? と思って
 ニコラスにちょっとスピードが遅いね、 はいそうです。 
 でもどうしようも無いでしょ。 何とかなるさ。
 原因は3つしかない。これをテストしてダメなら諦めな。

 まずは時間があまり無いので、モーター、アンプを交換しよう。
 次は走行を一回にしてこれらのメカ類を一気に総替えする。

 そして走行、一気にスピードアップ、何とタイムもコンマ3秒以上
 上がった。たぶんニコラスも操縦台で微笑んでいるだろう。
 一気のスピードアップでクラッシュを心配したが、無難にこなして
 いる、今回は非常に安定しミスが無い。昨年はクラッシュで
 泣かされたが、今年は全く車を壊さない、まだ修理は一度も
 無い、これだけでも大きな進歩だ。

 予想通りニコニコして操縦台を降りて来た。どうでしたか? 
 うんまあまあ速かったよ。ベストは13秒6これはトップ選手達の
 ラップとさほど変わらない。但しまだラップは安定しない。これで
 速いラップを出せる事が実証されたので、次は少し落としても
 良いから、安定したラップをだせる様にしよう。

 これからは最後の煮つめで再度スプリングの確認、そしてボディ
 のテストをしよう。スプリングはかなり良い効果が出ていると思う。
 それは路面温度に左右されず朝から夕方まで殆ど同じラップで
 走行出来る、他の選手は気温が上がった時はタイムが遅くなる
 が、ニコラスは殆ど変わらない。反面路面グリップが上がっても
 あまりタイムが上がらない。でもタイヤの負担も非常に少なく、
 温度の高い昼間でもタイヤの熱ダレが非常に少なく感じる。
 今回は3名の選手がこれを使っているが評判は良い。

 走行していると、明日からの予選の組み合わせが発表された、
 私はそれを見て
 ニコラスに組みあわせが出たので見て来いよ。どうしたのですか?
 まあいいから自分で見てこいよ! ニコラスは顔色を変えてピット
 に戻って来た。なんでこうなるのですか? そんなこと私にも
 分からん。組み合わせは最終ヒートには昨年のAメインドライバ
 ーや有力選手が集められ、その一つ前にヒートに組まれ、そして
 そのヒートには、マサミ、スリカーン、北澤選手等の有力選手が
 いる。

 ニコラスに取っては非常にプレッシャーを感じるヒートとなるだろう
 しかし又とないチャンス、憧れのマサミと一緒のヒートで走られる
 なんて...たぶんぶっちぎられるだろうけどどこまで視界に入って
 うられるか? 楽しみ...

 今日もまずまず順調にテストを終え、明日からはいよいよレース
 が開始される。今日までの所ではかなり良い状態だ。しかし
 今回はトップ選手達が非常に接近しみんな殆どラップタイムも
 変わらず、全くの予想が出来ない状態で物凄い混戦となる事
 が予想される。小さなミスの一つが明暗を大きく分けるだろう。

 夕食時ニコラスは私に、予想ではどのくらいまで行けそうですか?
 私は今回は非常にコンディションが良い、今の状態ではすべて
 が上手く行けば、Aメインも夢では無い、しかしいざレースとなる
 と多くの条件が変わり、練習の様に上手く行かないのが常、
 少しでもミスをすればC、Dメインじゃ無いかな?

 まあ、あまり入れ込まないで、リラックスをして自分の走りが出来
 れば、結果は付いてくるよ。

 今日は、後半は走りに疲れが見えて来た、早く寝てからだを
 ゆっくりと休める事、分かった? はい。

 公式練習が開始


 練習用に準備されたバンドクリップ、いったい幾つあるのだろう?


 練習は暗くなっても...



 2月22日(金)

 さていよいよ今日から本格的なレース開始、今日は最初に
 Tタイムプラクティス、そしてコントロール、予選1ラウンドとなる。
 今回のレースは世界選手権と同じポイント方式で、5ラウンド中
 3ラウンドのポイントで予選順位が決定する。最初の予選は
 非常に重要だ。

 我々の作戦は、今回はタイヤは3セット使用出来るが、例に
 よってニコラスは新品が苦手で、2回目以降が良いと言う事なの
 で、最初の練習とコントロールプラクティスに新品タイヤを使用し
 その2セットをレースに使用する戦略を取った。

 練習ヒートではあえて正美の横に陣取り、練習を迎えた。
 3番のスタート。行きよい良く飛び出していった。しかし戻って
 こない...1周目の外周を回り手前に来た所でストップ。
 操縦台からニコラスが、ギアが...と叫ぶ、慌てて車を回収し
 ピットへ走る。バックラッシュだと思った。たとえ1分でも走行出来
 れば、とギアをみて愕然。巾のほぼ8割近くが消滅。これは万事
 休す。

 手痛い失敗だ、このギアはかなりの回数を走りそろそろ交換しな
 ければならないと思っていた。プラクティスが終了しコントロールの
 前にすべてをオーバーホールする予定でこの時に交換をする
 予定だった。
 
 しかし大事な1回の練習を軽視した私の判断ミスには違いない。
 予定が大きく狂い、ニコラスもさぞ落ち込んでいるだろう。
 
 今までにもこんな失敗は何度もあるが、正美なら、いいよ、次で
 挽回するから!といつも慰めでくれた。そんな事を考えながら、
 落ち込んで車をバラし整備をしていると、すう〜とわたしのとなり
 の席に正美が来て、レースとは全く関係の無い家族の話をし出
 した。こんな事は離別後、一度も無かった事だが、何かとても
 気が落ち着き嬉しくなり、元気を取り戻した。

 そして整備をを終え、いざコントロールプラクティス。これは予選
 の順位を決める我々はさっき失敗したタイヤの辺り取りも同時に
 やらなくてはならない。ニコラスには練習後、勿論謝った。彼も
 大丈夫です。と言ってくれたが、余計なプレッシャーが掛かって
 いる事は分かっている。

 スタートをする。やはりタイヤはグリップが低い、前半はペースを
 落として慎重に走行する。さすが有名ドライバー達は速い、3番
 からのスタートだがどんどんと順位を下げていく、これは展開的に
 危ないなあ〜と思っていると、やはり転倒たいしたロスは無いが、
 精神的なダメージは大きい、走りにあせりが見え出す、
 そしてまた転倒、結局は完送はしたがこのヒートでは8番での
 ゴールとなった。

 練習では殆どミスをしなかったが、やはりレースでミスをする。
 この辺りがまだまだ彼の弱い所だ。レース後、ニコラスは、
 すみませんミスしてしまって...

 いいよいいよ、お互い様だから、これで相子だから次からは
 本番だから気合をいれて行こう! ラップタイムのAメイン
 ドライバー達には及ばないが、まあまあ妥当なラップは出ている、
 ミスがなければBメインの後ろかCメイン辺りは行ける。私はこの
 メンバーで、もしBメインにでも掛かれば大健闘だと思うよ。
 まさか、Aメインを考えているのではないだろうね?(笑)

 最後のレースは予選第1ラウンド。参加人数が多い為に、
 レース間の間隔が大変長い、3時間から4時間位の
 インターバルとなる。

 第1ラウンドは6時過ぎ、もう日が落ち始め暗くなって来た。
 レースが開始8番からのスタート、前方の選手はやはり速いが
 ニコラスも少しづつ順位を上げて行く、しかしタイヤが新品の為、
 あまりラップが上がらない、これは今日の一番の後遺症だ、仕方
 が無い。

 ちいさなミスはあったがまずまずは無難にこなした。記録から見る
 とまあCメインあたりには入るだろう。組み換えがあるので、この
 辺りは一番走りやすいかも知れない。

 そして走行後オフィシャルに車を回収され車検、ここでハプニング。
 なんと失格を宣言された。何故? リアーのアンダーカットが深す
 ぎるとの事。私が確認すると確かに少し高い。しかしこれは私は
 レース前に何度も車検場に通い検査員立会いでチェックをした
 そしてコントロールプラクティスでの車検でも問題なく通過した。
 勿論それから何も触っていない。何故? 不思議に思って色々
 と探索をするとコントロールまでは、車を台の上に置きチェックを
 していた、しかし予選からは台の上にシャーシを置きそれで
 チェックをする方法に変えたとの事。

 私はレースで始めて怒った。そんな馬鹿な事があるか! レース
 が始まってから検査方法を変えるなんて論外だ。もし変えるなら
 それを皆に分かるように公表すべきだ、と。 
 車検員は、すみませんルールですから...すみませんで済む事
 じゃない、貴方達もここで世界選手権を開催するかも知れない
 のだから、最初に間違っていたのなら、それはそれでいい、しかし
 それを伝え無ければ...もしこれが世界選手権だったら大問題
 になるよ。 勿論、私も判定は覆らない事は分かるし、今の
 我々のレベルではトップ戦線にいる訳では無いので事を荒立て
 たく無いが、私にもプライドがある、私は30年もの間1000
 レース以上もメカニックを務め、多くの世界チャンピオンの手伝い
 もした、しかしただの1度だって車検落ち等した事が無い。
 それなのにメカニックとしては最大の汚点を残す事になり、物凄
 いショックだ!貴方達にはたぶん分からないだろうが、これは私に
 とっては物凄い大きな事だよ。 と言ってやった。
 すみません。車検員は何度も謝った。もういいよ、みんな暑い
 中一生懸命頑張っているんだから...
 私は引きつった顔に無理やり笑顔をみせ、車検場を去った。

 さて、ニコラスになんて伝えよう? 言葉が無かった。 ニコラスが
 マーシャルから帰ってきて、掲示板をみに行こうとした時、ニコラス
 ちょっとこっちへおいで、そしてまあ座れよ。 ごめん! どうしたの
 ですか? 失格になってしまった。 えっ?どうして? 車検が
 通らなかった。言い訳はしたく無いがまた私のミスだ。ボディの
 うしろのカットが高すぎた。もうそれ以上は言わなかった。

 今日はニコラスも本当に良く頑張ったのに全て私のミスで全くの
 無駄な一日になってしまった。ほんとにゴメン! でもまだレース
 は始まったばかりだ、明日からもう一度気を入れ直し、一からの
 つもりで頑張るからニコラスも頑張ってほしい。はい、分かりました
 頑張ります。記録はどうでしたか? うん、記録は全て抹消され
 た為、公式では無いが、私の計時ではたぶん30位までには入って
 いるよ。でも総合順位は最下位なので、明日は1番ヒートから
 のスタートだよ。

 今日の嫌な事は忘れて、明日は気を取り直して行こう。まさに
 最後尾からの再出発だ。

 今日、友人から夕食に誘われているのですが、行ってもいい
 ですか?いいよ気分直しに丁度良いよ。また私も友人と一緒
 に食事の約束をした。じゃ、あまり遅くならない様に。明日は
 出番が早いから7時に朝食。

 部屋に帰り、思い出すとまた悔しさがこみ上げて来た。あのまま
 引き下がって良かったのだろうか? ディレクターに抗議すれば
 認められたかも知れない。でも選手権でもないレースで誰かに
 嫌な思いをさせるのも偲び無い、これで良かったのだ。と自分に
 言い聞かせた。

 開会式が始まる。非常に多い参加者


 スポンサーも多い


 見慣れた、カラーリングがズラリと...



 2月23日(土)
 朝7時、にこやかな顔でおはよう! とニコラスはレストランに
 現れた。意外とすっきりといている。作っているのかな? 
 ニコラス、夕べよく考えたのだけれど、昨日失敗は我々に取って
 は非常にラッキーな事かも知れないよ。どうしてですか? 
 それは我々は1ヒートだけれどまずストックからレースが始まり、
 9時半のスタートとなる、しかし速いドライバー達のヒートは、もう
 昼頃になってしまう。朝は気温も低くグリップも良いが、もし気温
 が上がれば、グリップは悪くなる。だから逆に良いチャンスかも知
 れない。ポイント制だから、一回でも良い順位を取れば大変
 有利となる。

 コースへ向い、組み合わせ表を確認、やはり一番最後しかも
 なんとドライバーはたったの2人。

 これはほんとにラッキーしかも相手は友人、共に失格者。全くの
 邪魔者はいない、日本では災い転じて福となす。と言う諺が
 あるよ。まさにその通りだ。
 これは、昨日のお返しと思い絶対に見逃すなよ。

 予選2ラウンド、2台の寂しいスタート、殆ど同じペースで走行
 する。ラップも速い、今までの自己最高のラップを続けるミスも
 無い。これは良い記録が出そう22周4秒、これは昨日の最終
 の路面の良い時の予選でも15、6位位に匹敵する。たぶん
 これから路面グリップが落ちてくるから、みんなあまりタイムが出ない
 のじゃ無いかな? ニコラスは、そんな事は無いですよ、皆速い
 ですからきっとタイムを出して来ますよ。 そうかな?

 私は長いインターバル、あまり興味がないのでレースは見ない。
 自分なりに車を整備したり、色々と作戦を立て、喫煙所で
 タバコを吸いながら、他の人達と雑談をして時間を潰す。

 どんどんとレースが進行し、やがて最終レースが終了した様子で
 皆がピットへ戻って行く、私も自分の持ち場に戻りくつろいで
 いるとニコラスがニコちゃん顔でピット戻って来た。ぼく10番に入り
 ました! 私はポーカーフェースでそうだろ私の言った通りだろ?
 でもこればほんとの実力じゃない、ラッキーだよ。昨日のお返しと
 受け止めよう。 でもこの幸運なチャンスをしっかりとものにした
 のは、褒めてあげる。これでプラスマイナスゼロ、これからがほんと
 のレース、今度は逆に皆より悪い条件で走行しなければなら
 ない、次のヒートはすべて日中なので、あまりコンディションは変わ
 らない。ただ今日の最後のラウンドは、ニコラスはまだ暑い間の
 走行で、後半は遅くなる為にグリップがあがり高記録が出る
 だろう。

 結果を見て多くの人がニコラスの順位をみてびっくりした。
 ニコラス上手くなったよね。いやいやこれはラッキーですよ。でも
 練習等を見ていても上手くなったよ。そうですか?ありがとう。 
 やはりレースでは結果を出さないと人は見てくれない。
 
 次の3ラウンドが勝負だ。ここでは皆がタイムは出にくい。ニコラス
 にとっては、ここが勝負どころとなるだろう。

 今日は特別暑い日中3ラウンドがスタート、やはり寂しい2人の
 勝負、ニコラス先行だが、ほぼ同ラップで2台が走行、その差は
 殆ど変わらない。全くの単独走行と同じ、途中で順位が入れ
 替わりニコラスが追走する形、走行は前を走っている。やはり
 グリップは悪くラップもあまり早くは無いが、そんなに遅くも無い、
 何とか無事走行を終了、ゴールタイムは速くないがまあこんな
 もんだろう。
 
 トップドライバー達はさすがにこの暑さでもドライブを決めてくる。
 3ラウンドは結果30位。しかし1ラウンドの高ポイントが効き、
 トータルで14位、勿論これから、まだ順位は落ちて行くだろうが
 まずは良い所にいる。

 さて最後のラウンド、今度は不利なところ、しかし暑さも峠を越し
 少し涼しくなって来た、さっきよりは良い状況になるだろう。

 4ラウンドがスタート、今回は予想に反して結構速いラップ、
 最初のラウンドとほぼ同じラップで走行する、これは結構行けそう
 2分過ぎ少しリアが滑りだした。危ないなあ〜と思った時、直線
 終了後の高速コーナーでコースアウト、マシン大破コース、
 しかし幸運にも復帰可能6秒以上のタイムロスはあったが、何と
 か復帰、しかしどこかが狂い、またタイヤにもダメージがあるのか、
 ラップは少し落ちたが、何とか完送。21周5秒、クラッシュがなけ
 ればほぼ最初のラウンドと同じ記録が出ただろう。もったいない
 けれど、これは仕方無い。でもこれは明日に繋がるだろう。

 やはりニコラスはいつもの悔しさ顔で、すみません! すみません
 はいらない。でも良かったよ、この路面であのタイムが出せれば
 上出来。勿論トップ連中はもっと速いが今はまだ彼等の敵では
 無い、自分との戦いだ。

 明日にはもう一回の予選がある、今日は早く帰ってゆっくりと
 休もう。多分また組み替えがあるのだろう。明日はCメイン位の
 走行かな?

 掲示板のタイムスケジュールを見ると、何と赤字でレースは
 5ラウンド中トップ2ラウンドと書いてある。ルール表には3ラウンド
 と明記してあるのに...いつのまに変わったのだろう? この
 レースはいつも突然ルールが変わるからね。(笑) まあ、どっち
 でもいいよ、2ラウンドだとニコラスには大変有利となる。

 いずれにしてもAメインは難しい。あと1日がんばりましょう。
 それにしても今日は暑かった。


 2月24日(日)
 今日は最終日、長かったのか短かったのか?最後の一回の
 予選と決勝レースのみ、Aメイン意外は決勝は一回の為、2回
 のみの走行となるだろう。

 ここまでは26位Cメインラウンド6番手のスタートとなる。ここへ
 くると周りの選手も速いドライバー揃いで大変難しくなる。

 昨日の後半からは、何故かスピードが延びなくなって来た。今回
 は、モーターコントローラーは、色々な物をテストしている。我々
 は基本的にはスポンサーは取らない。現在お願いしているのは、
 KOプロポだけである。これは何時でも自由に何でも使用出来
 る事、そしてまだ今の段階では成績も期待出来ず、お返し出来
 る事も出来ない為に、基本的にはすべて購入するという形を
 取っている。ただレースの時などは、スポットでテストと言う事で
 サポートを受ける事もある。

 モーター、コントローラーをチェックしてもらうが全くの異状はない。
 バッテリーかな? しかし今回は勿論、H−Energyのバッテリー
 を使用しているが、通常は認可の関係で使用出来るレースが
 少なく、ビッグレースで使用するのは初めてだが、チェック、テスト
 でも全く問題なく、十分な威力は発揮出来ていた。 昨夜寝な
 がらも色々と考えていたがどうも納得がいかない。

 朝一番モーターマン、アンプマンと3者会議(ちょっと大袈裟?)
 するが、いづれも譲らない。ひょっとしてハイポントでは? 
 バッテリーも残量が余り過ぎている。レース後でも3分近い残量
 がある。早速ニコラスを呼びチェックする。ピンポーン! やはり
 これ! ハイポイントが何故かずれて最高速に入らない。80%
 位で走行していた事になる。どうりで遅い筈だ。しかし何故この
 様になったのか?は謎である。
 これでパワーは皆と対等に行ける、ただパワーに振り回されない
 様に...。

 予選最終ラウンド、このラウンドで順位が決定する。集計は
 やはり2ラウンド合計という事で、ラッキーポイントをもっている為
 に非常に有利だ、このヒートの他メンバーは、総合トップでも取ら
 ない限りAメイン入りは難しい。しかしニコラスは、10位以内の
 タイムを出せば、夢のAメインは可能だ。まあ現実には非常に
 難しい事だと思うが可能性だけはある。

 レースがスタート、中盤で流れに乗っているがリアのグリップが
 低い、何とかコントロールしているがラップも上がらず大変苦し
 そうだ。やはり昨日の後半より路面が変わって来た様だ。グリップ
 剤が合わなくなって来たのかも知れない。タイヤのノウハウが
 少ないニコラスには、この様な変化に対応が出来ない。今後
 の大きな課題となるだろう、しかし何とか頑張ってドライブをして
 いる。ここでは無理をせず中盤をキープ出来れば、ポイントで他
 の選手より10ポイントも多く持っている為にかなり有利だ。
 しかしさすが最終ヒートで皆かなり熱くなっている。あぶない
 シーンが続出、そしてやはり後続の選手がニコラス車にヒット、
 ニコラスは場外へ...万事休す。すぐに救助されたが、もう一度
 のクラッシュは致命的、またその後も何度もヒット結局は1周
 近いロスタイムで予選は終了。
 
 レース後ニコラスは不満顔でどうして相手はバッドドライブを取ら
 れないのですかと言う。確かにあればバッドドライブだ、しかし
 Aメインならいざしらずこのメインではディレクターもあまり良く見て
 いないし判定も甘い、また相手がたとえピットストップを取られて
 もニコラスへの救済法は無いよ、これは不運としか言えない
 しかし、私の見た限りではあの場面では、相手はインから無理
 やり突っ込んで来たが、冷静に判断が出来れば、逃げられた
 かも知れないよ。

 この様な場面は今後もいくらでも起こる、これももっと経験を
 積んで行けば、ある程度避けられる様になると思う。

 予選が終了し結局はDメイン5番手、ちょっと不本意な成績だが
 これで良いと思う。はっきり言える事は、まだまだAメインの道は
 遠いという事だ。今回は色々と失敗や不運が付きまとったが、
 もし何も無く順調に進んだとしても、今のニコラスの実力では、
 最高でもBメインに入るのがやっとだと思う。これをしっかりと認識
 しなければいけない。

 最後の決勝では、もうこのヒートでは順位等どうでも良いから、
 タイヤのテストをしよう、今まで自分流でやって来たが、幸い
 ニコラスの友人がAメインに入った。多分今なら彼も教えてくれる
 と思うので一度尋ねてみたら? ニコラスは色々と自分で情報
 を集め結構複雑な事をしている様だが、彼は意外と簡単な方法
 を取っていると思うよ。

 早速ニコラスは尋ねてきて、そしてびっくりしていた。何もして
 いない、ただFXを普通に塗っているだけだと。そうだろ、何故か
 分かる? 分かりません。これはレースの常だが、練習の時は
 殆どがワークス達で、彼等はテストで色々なものを使用する、
 その為に路面の表面も変わってしまい、ある種のグリップ剤が良く
 なるかも知れない。しかしレースがはじまり、これだけ多くの一般
 ドライバーが参加すると、彼等は殆ど何もノウハウを持っていない
 から、極通常のグリップ剤しか使用しない、そしてそのグリップ剤
 で路面が出来てしまう。そうすると今度は他のグリップ剤が効か
 なくなってしまう。これは多くのレースで見られる現象だ、この落と
 し穴にはまってしまう、ワークスドライバーも多くいる。

 レースが進行するにつけ、オープンクラスのドライバーは普通に
 走っているのに、一部のワークスドライバーがズルズル状態に
 なるのは、これが原因では無いかと私は思っている。

 さて今回最後のレースDメイン決勝、今回はDメインと言えども多 くのベテラン選手が揃っている。決勝はまた予選とは違い多くの
 競り合いや接触が見られるこれらもまた通常では出来ない良い
 練習となる。

 スタートは5番ちょうど一番難しいグリッドだ、スタート直後やはり
 おおきな混乱がありニコラスはうまくすり抜け、一時は2番まで
 ポジションアップ、しかし又接触等が多くあり、大きく順位を下げ
 フィニッシュ。順位は分からないがかなり下位だろう。まあここまで
 くればもう順位等はあまり関係ない。

 レースは終わった。今回は特に浮き沈みの大きな変化のある
 レースだった。しかし結果以上に大変良い勉強が出来たと思う
 操縦技術は確実に昨年を上回っている事は多くの人が認めて
 くれた。ただやはりレース経験の少なさが色々な場面でマイナス
 となってしまった。これだけは通常の練習では出来ない為に
 もっと経験を積んでいくしかないだろう。

 今回は特に嬉しかった事は、我々のチームも少しずつ認知され
 始め多くのファンも出来て来た事だ。昨年はニコラスにサインを
 求める人は一人もいなかったが、
 今年は本人もびっくりするほど多くの人々が我々2人にサインを
 求めて来た。この人達は、皆私達を応援してくれる人達だ。

 私は以前のレースでは、決勝時の選手紹介での観客の拍手
 に注目していた。これが選手の人気の度合いで順位に関係なく
 一番多くの拍手を貰える選手となって欲しい。

 また、今回はデンマークより参加したSTEEN選手の助手も
 させた。彼は先日のDHI CUP でも激しいトップ争いをして
 3位になった実力者である。幸いにもニコラスは英語を話す為に
 彼とは十分なコミュニケーションが取れる。彼の手伝いをする事
 でまた色々なノウハウも教えて貰う事が出来る。ピットも隣に
 移動させ出来るかぎりコミュニケーションを取るように指示をした。

 今回のKYOSHOチームとしては、足立、STEEN、ニコラスの
 3選手だが、お互いのコミュニケーションが少なく、セッティングや
 タイヤノウハウの情報が無く皆揃って共倒れとなった様な感が
 する。これは同じ様な事をバラバラでテストをする為に無駄が
 多く、余計な事ばかりで空回りをしていたのだと思う。

 やはりレースでは、しっかりとした監督の下でチームが上手く
 効率良くテストをしなければ、チームとしての力は発揮出来ない。

 今の私の考えでは、やはりニコラス一人では、レース等の短い
 時間では十分なテストをする事が出来ない為に、ドライバーを
 増やす事を計画している。元々ひろさかチームの最終目的は
 ニコラスをトップドライバーとして養成する事と世界一と言われる
 チームを結成する事にある。ニコラスにも勿論この事は十分に
 伝えてその様に教育しているつもりだ。但しプロ養成機関では
 無い。
 
 自分の与えられた仕事(勉強)もしっかりとこなし、チャンピオンを
 目指し、そして次のドライバーを指導しチームを作り上げて行く
 事が使命となる。
 
 ニコラスももう2年目に入り、私の趣旨もかなり理解が出来て
 来た様なので、来年からは、もう一人”弟子”を採用する。人を
 教える事は自分に取っても大変良い勉強となる。幸い最近
 では私達のシステムが各地に伝わり、チーム入りの問い合わせ
 や依頼が多くある。今年はテスト期間として色々な人達と接触
 また活動を共にして、その中から一人を採用して正式なチーム
 員とする様に計画をしている。勿論抜擢するのは10歳前後の
 ヤングドライバーとする。

 また、同時にメカニック候補も物色し、育成したいと思っている。
 今回私が痛切に感じたのは、練習でトラブルがあった時、コース
 からピットまで全速で走ったがとても遅かった。自分の歳を忘れ
 ていたが、メカニックは強靭な精神力と体力を持っていなければ
 務まらない。こちらもやはり若者に移行して行かなければならない
 と痛感した。

 レース後ニコラスは、また、すみません、上手くレースが出来なく
 て...。何も私に謝る事は無い。一番悔しい思いをするのは
 自分なんだから。
 今日は最高の出来でした、ありがとう! と私に向って言って
 くれる 日を期待しているよ。今回も多くの人達がサポートをして
 くれた、この感謝の気持ちを忘れない様に。また自分の練習
 時間を削ってでもSTEEN選手を援助した事はとても良い事
 だった。彼はすべてを分かるドライバーだ、将来はキット大きな
 力を貸してくれると思うよ。

 次はドイツでのLPRレースに参加予定。帰ってまたしっかりと
 練習を続ける事。では、See you next month!


 コースサイドにはビッフェが。匂いと煙でドライバーから苦情が(笑)


 Aメイン最終ラウンドのスタート


 コースサイドまで人垣が、人間ガード?