廣坂 物語
廣坂 正明 及び 正美 の生い立ち、歴史を記録します。
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Vol−24
1/12世界選手権 2
ボディの変化。 最初に用意して行った、高谷塗装ボディ(上)
決勝はアソシ社長の勧めで、使用した軽量ボディ(下)。 チームメンバーが
徹夜で塗装してくれた。
レース中にどんどん進化していった。 右は光美車、これとほぼ同じ仕様だった
左は最終仕様。一体型モーターマウントやデフ等が変っている。アンプもKO
から、ノバックへ変更。
TOP−3 のマシン。 正美車、トニー・ナイジンガー車、クリスチャン・ケール車
共にアソシ12Lだが、ドライバーは、正美、アジア地区(FEMCA) トニー
ナイジンガー、USA地区(ROAR) クリスチャン・ケール、ヨーロッパ地区
(EFRA)となった。
各車ベースは同じだが、微妙にセットは違う。
世界選手権 こぼれ話
光美 健闘
今回は光美も同行しレースに参加させた。これには幾つかの狙いがあった。
勿論、世界選手権に参加させてやりたい気持ちが大きかったのだが、我々が
東京へ移ったが光美が依然として上京を拒んでいた為に、これがきっかけで
またRCにも興味を持ち、我々と一緒に家族で東京に住む事が出来るかも..
と考えた。
また今回のレースは正美にとっては大変重要なレースとなる。正美は大変
神経質な為に、レース前になると食事もあまりとらず、また塞ぎ込んでしまう。
正美が唯一心を開けるのが弟の光美だ、光美が近くにいるだけで正美にとって
は心の安らぎになるのでは?と思った。光美はいつもムードメーカーである。
しかしレースでは私は殆ど光美の面倒は見られない、その為に正美がメカ
ニックをする様にした。勿論正美は殆ど何も出来ないが、バッテリーを積んだり
タイヤのトラクション等を塗り、スタートさせる等の面倒をみた。勿論整備や
修理は私がした。
どうせ結果は大したことは無いだろう、と思っていたがいざレースが始まると予想
に反して大健闘。 トニー・ナイジンガーと同じヒートでは、大接戦をして皆を
驚かせた、最終的にはBメインとなったが、予選の終盤までは9位にいた。
もし、このままAメインに入ったら、どうしよう? 等と一時は心配した。
ヨーロッパ 対 アメリカ
完成されたコースを見たアメリカ勢は、すでに走行された形跡があった為に、
IFMARにクレームを付けた。すでに同じコースでレースをやったとの事でこれは
イコールでは無い。コースレイアウトを変更するか、もしくは逆周りにする様に
要求した。しかし、この要求は認められずに練習走行が始まった。
今度は、ヨーロッパ勢よりアメリカ選手達は世界選手権で禁止されている、
ウインターグリーン(サリチル酸)の入った、トラクション剤を使用しているとの
クレームが付いた。そしてオフィシャルの方で分析をしてもしこれが入っていれば、
レースで使用禁止にするとの報告があった。しかし予選開始時には分析が
出来なかったとの事で使用可となった。
このいきさつは我々には良く分からなかったが、何か取引が行われた様との事を
後に聞いた。
スタッガースタート
この世界選手権より、予選で選手が同時にスタートするのでは無く一台ずつ
順番にスタートをするスタッガースタートという方式となった。これはアナウンサー
が順番にカーナンバーを読み上げてスタートする。
途中でアナウンサーが交代し、丁度正美のヒート、一番、2番とアナウンス、
コールの間隔が遅い! アナウンスが慣れていないのだろう。 一番スタートの
正美がもう直ぐ一周回って来る。危ない!と思った。正美がゴールラインを通過
した時には、まだ10番の選手のNOは呼ばれていなかった。
正美のボディ
このレースでは、アソシのメンバーは殆どが新しく製作された軽量のTOJボディ
を使用していた。我々は事前には入手出来なかったが、会場で渡された。
しかし、塗装等が出来ない為に、今までのボディを使用する事とした。
予選が終了しTQを獲った正美に、決勝前日にアソシの両社長が正美に軽量
ボディを使用する様に言った。正美はグリーンのボディで無いと見慣れて無い
ので走行し難いといった。
社長は分かった、では正美の好きな様に塗装をさせる、と言って選手の一人を
呼び、命令調でこのボディを正美の好みの塗装をしろ!と命令した。
勿論彼もドライバーでレースに参加している。予選ではCメインだったそうだ。
私は、悪いね〜。と言ったら彼はどうせ私はCメインだからもうレースは終わった。
これで正美が良い成績をだしてくれたら、そちらの方が嬉しい。と言ってくれた。
そして徹夜で決勝日の朝までかかり塗装をしてくれた。そして決勝は棄権した。
アソシームの掟?
この世界選手権ではチーム内で色々な葛藤があった様だ。文三氏は勿論
知っていたのだが、あえてレースが終わるまでは、動揺するかも知れないので
私達には詳細は伝えなかった。
世界選手権では、アソシチームでは予選の動向等で決勝レースのオーダーを
ほぼ決定する。 考え方は絶対に1位を取る事、2位から10位まで獲っても
これは負け、1位さえ獲れば勝ちという考えだ。
その為に決勝前には、有力選手を決め他のメンバーはすべてそれをサポート
する事が指令される。 今回は本来ならトニーがNO−1となるのが通例だが
正美はTQを獲った。これで3役は色々と協議をした様だ。NO−1となると
すべてのサポートはここへ集中する。特にバッテリー等は一番良い物を3本与え
られる。このバッテリーの威力は凄いものだ。20万セル以上からより抜かれた
ものだそうだ。
皆が7分30秒位でダウンするパワーを楽々8分間走らせるだけの余裕がある。
これを使えれば非常に有利となる。
今回は二人の順位を決めずに、対等に戦わせようと言う事となった。我々には
その事と二人で潰し合いだけはしない様にと注意された。
そして他のメンバーには、この二人に絶対近づくな、そして他チームの選手は
少しでも遅らせろ、との指示が出る。世界選手権のルールでは、もし他チーム
の選手の妨害したと認定されれば、そのチームすべての選手が失格となる。
通常選手は周回遅れ等はコースを空けないといけないのだが、一つのコーナー
だけをブロックする、そしてすぐにコースを開ける、これでも後続の選手はタイム
ロスをする。これをされると、なかなか前へ行けない。特に敵チームがいると殆ど
タイムを出すのは難しい。
クリスチャン・ケール選手が8番からすぐに上位にあがり、正美、トニーとトップ
争いをした。1ラウンドが終了した時に直ぐに首脳に呼び出され、ケールに二人
に近づくな!と叱られたそうだ。お前は優勝する可能性は非常に少ない、もし
二人に接触でもしたらクビだ。と言われたそうだ。そして正美に次にもし、
近づいても絶対に仕掛けないので安心して走行する様にと言った。
これがアソシの掟で、この後のレースでも色々な場面に遭遇した。この徹底した
選手の管理が連勝を続けて来た秘訣だと思った。 選手に取っては不合理
かも知れないが、すべての選手に可能性はあり、またもし上位に行けば、最高
のサポートを受ける事が可能となる為に、選手はそれを目指す。
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